最高裁判所第二小法廷 平成2年(行ツ)120号 判決 1991年1月25日
新潟県南蒲原郡栄町大字猪子場新田一三〇〇番地
上告人
株式会社 三条機械製作所
右代表者代表取締役
建石昌男
右訴訟代理人弁護士
秋吉稔弘
同 弁理士
瀧野秀雄
有坂悍
ドイツ連邦共和国
ハンブルグ八〇 カンプショセー八-三二
被上告人
ケルベル アクチェンゲゼルシャフト
右代表者
ヘルムート ベッカー フロリス
ルードウィヒ アドルフ ヒス
右当事者間の東京高等裁判所平成元年(行ケ)第八三号審決取消請求事件について、同裁判所が平成二年四月一七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人秋吉稔弘、同瀧野秀雄、同有坂悍の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の判断遺脱、理由齟齬の違法はない。論旨は、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤島昭 裁判官 香川保一 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平)
(平成二年(行ツ)第一二〇号 上告人 株式会社三条機械製作所)
上告代理人秋吉稔弘、同瀧野秀雄、同有坂悍の上告理由
原判決は次の点において判断遺脱または理由の齟齬がある。
一、原判決は「第一引用例(甲第四号証米国特許第三、〇六〇、八一四号)記載のものにおける加熱装置は、被覆テープの縁に塗布された熱硬化性である液状接着剤を加熱することによって不活性化し、被覆テープの接合部を接着固化させるものであり、冷却装置は、加熱され不活性となった接着剤による長手方向のシームの破裂を回避するという機能を営むものであると認められる。」とし、本件発明における接着剤、加熱装置及び冷却装置の機能と相違することを挙げて、「第一引用例及び第二引用例(甲第五号証フランス特許第一、五八一、〇八三号)記載のものとを組み合わせて本件発明の構成を得ることは当業者が容易になし得るものとはいえない。」と結論付けている。(判決一六丁表四行乃至一八丁末行)
二、しかるに、原告の主張は、第一引用例と本件発明における接着剤、加熱装置及び冷却装置の機能が相違することは認めつつも、次の理由により、本件発明は第一引用例及び第二引用例から容易推考できると主張したのである。即ち、
<1> 連続体形成手段と被覆テープ供給部の間に接着剤の塗布装置を設けることは、第二引用例により公知であること、
<2> 熱溶融接着剤及びこの熱溶融接着剤を加熱して再接着することは周知(甲第八号証雑誌接着一九六九年四月号)であること、
<3> たばこフィルタの縫合部を接着するために、縫合部に塗布されている接着剤を加熱する加熱装置自体及び加熱された接着剤部分を冷却する冷却装置自体の構成は第一引用例により公知であること、
<4> 従って、第二引用例記載の接着剤にかえて、接着剤として周知の熱溶融接着剤を使用すること、及びその場合に接着を確実にするために再加熱して再接着することも周知(甲第八号証の記載)であり、当業者が容易に想到し得るところであり、また、熱溶融接着剤は、加熱により活性化して接着性を有するようになり、その後、冷却することにより接着剤が硬化して接着を完了するという特性から、加熱に引き続き冷却するという一連の行程も容易に想到できるところである。
<5> よって、「第一引用例に開示されているフィルタ材料の連続体を形成する場合の加熱装置及び冷却装置が、熱溶融接着剤を使用してフィルタ材料の連続体を形成する場合の加熱装置及び冷却装置として転用できることは、当業者が容易に想到することができたものといわねばならない。」と主張したことは準備手続および弁論の全趣旨より明らかなところである。
三、しかるに、判決は前記一、のように認定して、本件発明は第一引用例及び第二引用例より容易に推考できるものではないと判断しているから、判断を遺脱した違法がありまたは理由齟齬があり、右違反および齟齬は判決に影響を及ぼすことが明らかであるので、原判決は破棄されるべきである。
以上